gusonの日記

脳外科勤務医.仕事,茶と書,仏教,趣味,その他について独り言です.

社会的入院について

入院するということ.その場合,治療を目的とする.病態を評価して,診断する.そして病名をつけて,それに対する治療を開始するが,外来診療では難しい場合,入院となるである.病名についてはやはり,一時的な場合や症状名だけのこともある.すぐに診断に到らない場合も少なくないのである.

 

ところで,病名の付けようもなく,体調不良を理由に入院を希望する方がある.めまい,嘔吐,食思不振.よくよく聞いてみると,一人暮らし,食事準備どうにもならない,世話する人無し・・・高齢者にありがちな社会的入院希望ということになる.発熱無し,血液生化学問題なし,CT,MRIなど画像検査をいくらやっても結果はわかっている,異常なぞなしなのである,血圧安定・・・なんら危険な症候もないのであるから.中にはキャリーケース持参されて,入院する準備万端をし,そのうえで自ら救急車を呼ぶ.そして,病院としては追い返すわけにもいかず,別の病院へ振ろうとするも転院先などなし,入院加療することになるのである.

ER科の先生によびだされ,申し訳なさそうな顔で小声で,「3年前小脳梗塞で貴科に入院歴があり現在も貴科通院中なので」ということで脳外科入院です.わずかでも急性期病変があれば入院加療の適応があるのだが・・・

 

めまいを主訴に社会的入院となるパターンは多いように思う..もちろん,社会的入院は医療費を圧迫,介護保険の準備等も含めて病院療養期間がながくなるというもの.家族としても安心だ.ともかく医療費が無駄になってしまうのは事実である.病院としても収益は得にくいように点数改正されてあり,退院圧力はますばかりである.そうそうに療養型病院への転院をはかるのである.

 

ところで,めまいについて.その診断治療は内科,耳鼻科,脳神経内科,脳外科いずれも関わってくる.めまいというとすぐに脳神経を思い浮かべるものなのだが,神経系疾患の占める割合は11.2%,さらに脳血管障害はさらに少なく4%ほど.以外にすくないことまず注意して欲しいのだ.原因としては耳鼻科領域:32.9%,心循環器系21.1%,呼吸器系11.5%.呼吸器系?でもめまいが.睡眠時無呼吸というものがあってそれが原因となること,薬剤の副作用も無視できず.大半は耳性であることがわかる,つまりなんともない,そのうち治るのだ.心配ご無用よいうやつなのである.

 

そうはいっても,めまいのすべてが問題なし,というわけではない.危険なめまいもある,年齢が65歳以上の場合,高血圧,糖尿病の合併,神経症状をともなっている,強い頭痛を伴っているなどは注意するべきで,いずれにしても,ご高齢の方でめまいが持続する場合,やは受診したほうがよいだろうということになる.

 

あきらかに介護上の問題,食事に三度ありつけないとか,その程度の問題と思われる事態があっても,まず病院に入院してということは,やむないことなのだろうがなんとかしたいものだ.介護療養について,体制はまだまだ,その整備にほど遠い.介護離職は後をたたず,まず,介護の認定に途方もなく時間がかかるという現実もある。まったくその長期間を要するのははっきりいって馬鹿馬鹿しいくらいである.なんせよ,行政がやるからそういうことになるのであろう,より単純にスムーズにするにはやはり民間に任せた方がよいのだ.まだまだ民が入る余地があるように思うのだが.お役所仕事ではダメなのである,スピード感がなし.申し訳ないが言わせてもらいます.