gusonの日記

脳外科勤務医.仕事,茶と書,仏教,趣味,その他について独り言です.

DOAC拮抗剤

オンデキサについて:DOAC拮抗剤:アンデキサネットアルファ(遺伝子組み換え)製剤

DOACに関連する大出血は多岐にわたる.場合によっては致命的となる.特に頭蓋内出血患者が血腫増大を経験する可能性についてオッズ比は3.48.すなわち3倍以上あるとのこと.たしかに,これで,オンデキサ投与によってただちに,DOACの作用が中和されるのは重要である.経験的には出血はピタっと停止する.

 

いっぽうで,その投与にともなって生じる有害事象,副作用として血栓症がある.なかでも,脳梗塞の併発がもっとも多いと言うこと.・・・正直言って私の30年以上になる臨床経験で薬剤投与の結果,脳梗塞が発症したという事態は経験していなかった.これをを初めて経験したのは3年前,オンデキサ投与後の血栓症,それに対して血栓回収術を施行したことがある.添付文書にも479例の臨床試験脳梗塞は22件4.6%とある.

 作用点をしらべると,この薬剤投与の結果,薬理学的にはそういった現象はおきえない,ということと説明を受けている.オンデキサとは一種のDOACに対してデコイのような役割をしている・・・,DOACを効率的に無力化している,とMRは説明していた.

しかし,新薬には想定しない副作用が生じること,珍しくないだろう.例えば.我が国で開発され,がん特効薬と鼻息あらく世に出たオプジーボ:免疫チェックポイント阻害薬.この薬剤の投与で間質性肺炎1型糖尿病など想定外の副作用の報告がでて問題となったことがある.薬剤投与のメリットやデメリットは常にともなうこと,こればかりは仕方がないであろう.

初めおそるおそる投与されてきたが,今は投与が一般化するにつれて出血性副作用は多く経験するようになった.それ副作用というより,単なる薬理学的事象,あたりまえか.

 

われわれ血栓や塞栓,そして出血という病態の推移に悩まされているが,これらは病態は実は同じ,結局別の現象ではなく同じ平面を別の面よりみているにすぎないのではないか?なんとかコントロールできないものかと夢想する.理論物理学者がこれを観察すると,非常に単純な方程式にまとめてくれないかな.医者にはとうていできないが仮に数学的に解をえることができれば,それを用いてと夢想する.そしてその解を得てそれぞれの病態の予測ができればありがたいのだが・・・