gusonの日記

脳外科勤務医.仕事,茶と書,仏教,趣味,その他について独り言です.

脳血流と高次脳機能:脳血流ー脳機能バイナリーその1

私の研究テーマの一つとして脳血流と高次脳機能というのがある.

随分前から取り組んでいる.問題はを単純化すると,

「頸動脈血行再建術は高次脳機能とのあいだに有意な関連性はあるのか」ということ.つまり,血行再建術が高次脳機能を改善するの?である.

内頸動脈の血行再建術についは,頸動脈内膜剥離術,ステント留置術の二種類があり,その脳梗塞予防という観点で,比較的厳密な適応基準がある.これはその脳血流動態,とくに脳循環予備能であるとか,血流の盗血現象などの観点より決定するもので詳細は本筋とは関連がないので省略.

 ではその血行再建術が高次脳機能に対してどのような影響を及ぼすか,という事は血行再建術を日常臨床で一般的に施行するようになってから,ながらく不明であった.まず,脳血流は血行再建術前後でおおきな変化はなし.しかし認知機能を調べる神経心理テストをその前後で行うと,前頭葉機能(FAB),言語性記憶,一般性記憶等でいくつかの項目で改善が得られた.当時の結論では少なくとも悪化させることはない,とかなり控えめな結論でしめくくった.というのも,それが高次脳機能を改善させる,とはなかなか結論づけることは抵抗があった.これまで多くの報告のなかで,メタアナリシスでは明確に,単純に「脳血流が上がれば認知機能は改善する」とは結論されていない.